映画の感想を語りながらコーヒーが底をついたころ、ようやく店を出ようかという空気感になったころ

「そろそろ出ようか。」

と彼が切り出す。

 

ここまでの二人の時間を名残惜しみながら、うんと返事をし店を出る。

 

店を出ると、湿気と生ぬるい空気が全身を包み、夏を感じて心が上ずる。

彼もそう感じているだろうかと気になって見上げると目があって

「ん?」

と彼に聞かれ、何でもないと返事してしまう。

 

でもやっぱりこの気象について話したくて、夏の夜って感じの空気だね。と声をかける。

「そうだね。このまま時が止まってもいいくらい好きだな。」

と言われ、夏に言ったのか私に言ったのか頭の中が混乱しはじめる。

 

ふと彼が

「花火する?」

と、この夏っぽい夜をまだ楽しみたいという様子で提案してきた。

私にとっても願ったり叶ったりだった。さっきの言葉は夏に言ったの?私に言ったの?と、夏にジェラシーを感じながら彼の提案を上機嫌でうん。と返事した。